2020年6月8日

弊社代表取締役の森口修逸が産業衛生学会で口演を致しました

弊社代表取締役の森口修逸が産業衛生学会で口演を致しました。
 森口産業衛生学会(提出済)20191219口演

共同演者として、一般社団法人PHR協会の下記の仲間の方々に執筆に関しての
ご協力をいただきました。この場を借りて謝辞とさせていただきます。
 筒井保範・細羽実・織田進

残念ながら、コロナ禍のために旭川での大会は中止となり
口演は下記の資料をネットワークに投稿することになりました。
 (ノート付き)森口産業衛生学会提出用)20200513口演資料

上記PowerPoiintの説明概要を以下に記します。
PPTの各ページをご参照のうえ、御覧ください。

      PHRサービス事業者の基盤環境整備への提案

P1 (一社) PHR協会は2012年にPHRの実践を目指して創立し、PHRの活用による個人の健康管理を目的に、
毎月の委員会と毎年数回の講演会とを重ねてきた。今後は、これらの実績をご報告し、PHRの利活用についての
利活用に関する議論に進めるための中間報告とし、PHR実現に関わる基盤環境の課題を検討してきた。

P2 「利益相反について」:本発表に関連して共同演者含め開示すべき利益相反に該当する項目はありません。

目的

P1 (一社) PHR協会は2012年にPHRの実践を目指して創立し、PHRの活用による個人の健康管理を目的に、
毎月の委員会と毎年数回の講演会とを重ねてきた。今後は、これらの実績をご報告し、PHRの利活用についての
利活用に関する議論に進めるための中間報告とし、PHR実現に関わる基盤環境の課題を研究してきた。

P2 本発表に関連して共同演者含め開示すべき利益相反に該当する項目はありません。

P3 現在、PHR協会が定義するPHRは、PHRを管理するシステム全体を指し、これまでは、
医療機関(医療情報)・企業(産業保健情報)・健康保険組合(医療保険情報及び介護保険情報、
特定健診結果情報 等)に管理を義務付けられてきた医療情報と自身が測定・収集した個人健康情報を、
個人が管理することを目的とする。

P4 PHRが対象とするデータの例を図示する。PHR情報の一部には、PHRの本人が責任を持てない、
または存在を把握していないデータが存在する可能性がある。

P5 これまで、PHRの本人が管理できる、従って個人が特定できる情報を原則としてきた。今後、PHR概念を
拡大し、PHRの利用目的の中に、本人の同意を得て収集したデータを匿名化・匿名加工情報化して、
ビッグデータとして、医学・疫学や、医療政策や、種々のデータを流通させて企業の戦略に活用することも、
視野に入れて検討している。

方法

P6 PHRのシステム要件としては、
1.個人単位にすべての情報を所在管理し、システム間のポータビリテイを保証するために、出来る限り
 国際的な標準規格を活用し、
2.収集された数値・画像・波形情報のようなメタデータ記録・伝送・活用し、
3.必要に応じて、かっ完成を保証するために、「真正性」を担保する仕組みを持ち、
4.PHRの本人が開示範囲をコントロールできる仕組みがあること、が望まれる。

しかし、利用目的を果たすならば、例えば、一部の要件が欠けているシステムの存在を否定しないが、
その場合は、欠けていること及びその機能を明示して利用に供しなければならない。

P7 これまで、PHR協会での「PHRの定義」について述べてきたが、これからは、PHRの利用目的を中心に、
議論を進めることになった。PHRは、個人が自身の健康を維持・増進するために、個人健康情報を本人の
責任で蓄積することであると説明してきた。「PHRサービス産業」は、このPHRを活用して、個人の健康の
維持・増進するとともに、生涯にわたり蓄積し、国民、さらには人類の健康に役立てることを目標とする。

P8 労働安全衛生法に利用する個人情報を「PHR本人のすべての個人情報は本人のものである」という
考えが成り立つかを、健診後の就業措置を事例として検討してみる。産業医科大学の大神教授の資料を
参照して検討する。

1.健診機関等で実施する健診において、診断区分を含む健診結果の部分は本人に提供すみである。
2.産業医等、産業保健スタッフ指導区分結果は本人に提供すみである。

しかしながら、産業医が面談・職場巡視を経て判定する、
3.就業区分判定のプロセスを本人に提供することについては、専門家の間で、
   反対⇔賛成? の異論がある。

我々は、これを産業医・企業の人事および安全衛生管理等の専門家を対象にアンケートを行うことに
より、検討を深める予定である。

P9  iPHRのデータ項目のうち、本人が開示・管理する部分を切り分け提供できるか?という課題に対して、
「(industrial)PHRと(individual)PHRとは矛盾しない。」との意見があり、その場合は、iPHRにおける、
各ユニットのデータ項目を産業保健向け利用目的(iPHR)と個人向けの利用目的(PHR)とを併行して
企業経営者と産業医が議論し、検討すべきで、個人向けの利用目的となった項目については、「PHR」として、
本人管理にゆだねることが可能となる。
ただしその際でも、産業医を含む産業保健スタッフは、「医療専門家として本人のために、」本人からの
相談を受ける余地を残す努力をおこなうべきである。

結果

P10  PHRサービス産業を概観すると、現在は、様々な「PHRサービス事業者」が様々なツール・手法
により、様々な利用目的で、「PHRと主張するもの」を推進している。PHRサービス事業者が定義した
「PHR」を、PHRデータの本人の同意を得て、収集・蓄積・利活用し、現在のPHR本人の健康状況を
プロファイリングし、個人の健康管理を実現することを実現する。さらに、大量のPHRを匿名化し
ビッグデータとして、社会全体における個々のPHRの健康状態を明確に位置付けることができれば、
AI等を活用して、標準的な治療方法を確立し、社会全体の健康管理に寄与することを実現できる可能性が
出てくる。筆者は、これを、「健康づくりPHR」と定義し、これを商品開発し市場に提供するベンダを
「PHRサービス事業者」と定義する。これらの他に、一部機能のみを行う事業者も含む場合もあり得るが、
例えば、紙のデータをデジタルデータに変換するだけの機能のみを行う事業者(データパンチ業務)のような
場合は、PHRサービス事業者とは呼ばない。

P11  PHRシステムはPHR業務機能とPHRツール基盤から成る。PHRの利用目的は様々であり、
多くの機能が複雑に絡み合ったシステムになることが期待される。
PHR業務機能は、PHRツール機能を基盤として、医療連携機能や健康管理機能を実現するために、
多くのシステム間と自由につながることが、強みとなる。クラウド環境では、業務機能はSaaS
(Software as a Service)上で、ツール基盤は主にPaaS(Platform as a Service)で稼動すると考えられる。
また、生涯一貫して、PHR本人による情報の利活用が可能であることが期待されるところから、
100年以上の長きにわたって、ハードウエア的にも、ソフトウエア的にも、データフォーマット的にも
ポータビリテイをコミットすることが望まれる。
「産業保健 iPHR」「病院情報システム」などはそれぞれの機関・組織が内部での業務を遂行するためと、
主に証拠性の観点からの保存義務を果たすために個人健康情報を保存している。個人健康情報は、個人情報
保護法の開示権等により、個人健康情報の本人が収集・保管する必要がある。

P12 「健康づくりPHR」の生成と活用について解説する・
1、医療機関・保険組合・企業 等、個人健康情報の保有機関及び、IoT機器等から
 収集・保存した個人健康情報を基に、PHRを生成する。
2、機関内や企業内で(匿名加工化ではなく)匿名化して、機関内全員(もしくは特定範囲)の
 個人健康情報を蓄積する。必要に応じて、他組織から匿名加工化データを購入して、PHR本人も理解でき
 健康増進の対応ができるPHR(健康づくりPHR)を創成する。
この健康づくりPHRは、PHR本人の特性を削除することにより、一般化し、逆に、健康づくりPHRを
他人のPHRの特性を追加することにより、特定個人に効果のある治療が実現できる。

P13 今後、「PHRサービス事業者」自身が、既存の医療、もしくは既存の健康管理と比して、
  1.PHRとは何か、2.PHRは誰にとって(又は、何にとって)有効か、3.PHRを何のために使うのか、
を常に問い直すことが重要である。
PHRは、既存の医療、健康管理のように法律的な支援がないため、その活用には必ず、PHR本人の同意が
必要で、個人情報保護法の定めにより、同意を得るために、PHRの利用目的を伝える必要がある。

P14 厚生労働省は、2020年度現在、PHRとして、全国民の特定健診・保健指導の健診結果を
「PHR」としてマイナンバーに紐づけして、マイナンバーカード等でレセプトデータとともに、健康情報の
本人が表示できる仕組みを確立した。また、乳幼児や学童の健診結果も国が管理している状況にある。
今後は、国が保有していない企業の保有する産業保健情報、医療機関が保有するカルテ等の医療情報や画像情報、
個人が運動した情報をIoT利用等により収集した情報などが残っている。
これらの情報すべてを国が管理することは、国にによる情報管理の不都合な面が顕在化してくる恐れがあるため、
望ましくない。

P15 PHRの実現には、
1.本人の健康への自覚 はもとより、
2.人生の各局面の医療機関や企業・保険者等の健康情報の発生元からの「各時点での」標準化された
 健康情報の発生・交換
3.PHRの情報交換と保存のためのICT基盤環境の整備
4.利用目的が異なった医療機関や企業・保険者等とPHRの関連を明確化する法的な基盤整備

などが必須である。
PHRサービス事業者は様々な観点からのビジネスモデルの検討が必要である。

考察

P16 PHRサービス事業者はICTを活用して、従来の医療/健康管理を効率的でさらに効果的に行うことが
期待される。PHRの利用目的を明示して個人から同意を獲得してPHRをICTを活用して取得する。ビジネスモデル
をより効果的に成果を導くためには、
1.マイナンバー及び特定健診・保健指導のような公的に確立された基盤データ環境、
2.FHIR・DICOMのような国際的な標準化とクラウドの積極的活用による効率的なシステム構築
3.国際的な方向性を見据えた個人情報保護と情報セキュリテイ・サイバーセキュリテイのマネジメントにより、

 獲得した同意を利用目的を確実に実施できる社内システムの構築が環境を活用することが近道である。
さらに、PHRは本来、PHR本人の権利として、EUのGDPR(個人情報保護法)では、生涯にわたるポータビリ
テイが、求められており、わが国でも早晩、その方向になると考えられる。
そのためには、PHRサービス事業者で永年蓄積したPHRを随時、標準化データへ変換できる仕組み・ツールの整備
は必須と言える。

P17 ご清聴ありがとうございました。